栓を開けたワインの保存法 6通りを徹底比較

栓を開けたワインの保存法 6通りを徹底比較
2012/8/11
フォームの始まり
フォームの終わり
 加齢とともに酒量が減ったせいか、ワインを開けてもボトル1本飲みきれない。翌日もワインに合う食事ならいいが、そうとは限らない。そのまま飲むのを忘れてしまうこともある。飲み残したワインは酸化が進む。開けたワインを上手に保存するにはどうしたらいいのだろう。
6つの方法を比べてみた
6つの方法を比べてみた
 ボトルを開けると、ワインは空気中の酸素に触れてゆっくりと変化する。一般に「酸化」と呼ばれる現象だ。これを客観的に調べる方法があれば、酸化を防ぎ、ワインを上手に保存する方法もわかるはずだ。
冷凍保存は論外 色味の変化大きく
 山梨大学付属ワイン科学研究センターの奥田徹教授に相談すると「アルコールのアセトアルデヒド濃度の変化なども詳しくチェックする必要があ り、実は科学的に酸化を示すのは難しい」という。それでも、大まかながら「手っ取り早い方法」を教えてくれた。ワインの色味や香り、味の変化を調べる方法 だ。
 色味は「分光測色計」という測定機器を使って比較できる。香りや味は自分の五感を駆使して、酸化の度合いを測ることにした。
 さっそく様々な保存法を試してみる。まずは1000円台のアルゼンチン産と1200円台のフランス産の2種類の白ワインを買った。赤ワインではなく、白にしたのは「色味の変化がわかりやすい」(奥田教授)ためだ。
 雑貨店でワインの保存用にボトル内の空気を抜く栓や、窒素などのガスを充填するボンベを購入。(1)抜いたコルクで栓をする(2)飲み残し たワインを小容器に移す(3)冷凍する(4)オリーブオイルを注ぎ、油膜をつくる(5)市販の栓を使用する(6)ガス充填――の6つの方法を試す。飲み残 したワインを冷蔵庫(冷凍室を含む)で保存し、開栓3日後と1週間後の変化を調べた。
 試した結果、論外だったのが冷凍保存。製氷器にワインを注ぎ、冷凍室に入れた。アルコールを含むためか、普通の氷のようにカチカチにはならなかった。

 キューブ状になった氷の上部と下部が2つに割れ、上部を口にすると水っぽい。スプーンですくい、固まりをワイングラスにいれると、まるでワインシャーベットのよう。室温が高くあっという間に溶けたが、グラスの中の液体の香りはすっかりとんでいた。
 色味の変化も一番大きい。製氷の過程でワインの上面が空気と多く接触し、酸化が進んだようだ。ただスプーンでサクサクかき交ぜながら食べると、夏場のこの時期はいけた。
 オリーブオイルで油膜をつくる方法もダメだった。空気中の酸素に触れなければ酸化を防ぐことができる。ワインを上手に保存するカギもそこにあるため油膜は妙案と思ったが、しょせんは机上の空論だった。
http://www.nikkei.com/content/pic/20120817/96958A96889DE6E6EAE2E7E0E7E2E3E2E2EAE0E2E3E085E2E1E0E2E3-DSXDZO4480526010082012W03201-PN1-23.jpg
 オリーブオイルの中でも香りの薄いものを用い、油膜の厚さも数ミリ程度にとどめたが、いざ飲もうとする際には苦労した。きれいに分離させるのが、極めて難しい。グラスに注いでもオリーブオイルの黄色の油粒が残り、見た目も悪い。
1週間後に調べると
 分光測色計がオリーブオイルの黄色を感知し、測定そのものも難しい。実用的ではなかったと反省した。
 「ガスを充填」「市販の栓」「小容器に移す」の3つの方法は効果があった。コルクで栓をしただけのワインに比べ、3日後の色味はほぼ変わらなかったが、1週間後に調べると、やや変化が少ない。特に1000円台のワインは差が顕著だった。
 もっと長期間保存すれば色味の変化はさらに大きくなるかもしれない。上手に保存するには、やはり一手間かけた方がよさそうだ。
 ボトル内の空気を抜く市販の栓は2種類試したが、いずれも操作は簡単だった。また今回購入したボンベは窒素と炭酸ガスをボトル内に噴射し、その後コルクで栓をする方式。表示には「約90回使用可能」とあり、1回あたりの単価は20円程度の計算だ。

「小容器いっぱいに移す」が手軽で効果的
  単純に費用対効果を考えると、小容器に移し替えるのが手っ取り早いかもしれない。今回は自宅にあった小型のペットボトルを利用したのでタダ。小容器にワイ ンをなみなみ注ぎ、フタをした。中の空気の量や接触面がワインのボトルより少なかったせいか、香りも味も開栓当初と変わらない状態に思えた。

http://www.nikkei.com/content/pic/20120817/96958A96889DE6E6EAE2E7E0E7E2E3E2E2EAE0E2E3E085E2E1E0E2E3-DSXDZO4480528010082012W03201-PN1-23.jpg
「味がどう変化するか、自分なりに試すのもワインの楽しみ」。シニアワインアドバイザーの資格を持つサントリーワインインターナショナル(東京都港区)企画管理本部の柳原亮さんはあえてワインを飲み残し、味の変化を調べる実験を自宅でも重ねている。
 柳原さんは「赤ワインも飲み残したものは、冷蔵庫に入れて保管する方がいい」という。直射日光をさけ、低温で保存した方が微生物などの発生を防げる。「常温で飲みたい」人も飲む直前に出せば問題ない。
 酸化が進んだワインを飲んでも、健康上の問題はないのだろうか。「ワインはアルコール度数が比較的高く、水素イオン濃度(pH)が低く酸性が強いので、雑菌などが繁殖しにくい」と奥田教授は話す。
 酸化が進んだワインの体への影響は「微妙なところ」という。酸化させて作るワインもあるためで、健康上の問題より「精神的な問題が大きい」とみる。何をおいしく感じるかは人それぞれ。ワインの酸化が進み、まずいと思えば飲まないにこしたことはない。
記者のつぶやき
 「開栓直後よりワインをおいしく飲んでもらうために」。ワインを別の容器に移す「デカンタージュ」のワケをソムリエに聞いたときの言葉を思い出した。ワインを花開かせる。そのために空気中の酸素が一役買っているのは間違いない。
 とはいえそれも程度問題だろう。時間が経過するとワインの色味や風味は落ちる。おいしく感じるうちにさっさと飲む。やっぱりそれが一番か。
(編集委員 堀威彦)

[日経プラスワン2012年8月11日付]